七つの子の教育学

大学教員による七人の子育てと教育問題についての雑感

「産休クッキー」問題について考える

 先日、ABEMA Primeで「産休クッキー論争」という話題を取り上げていました。

 「産休クッキー」は産休に入る前妊婦さんが、迷惑をかけるからという理由から職場に配るお菓子のことらしいです。それに対して、「マタニティハイでうざい」とか「不妊や子どもがいない人への配慮に欠ける」「職場の同僚の大変さを考えるといらつく」などの批判的な意見があるらしいです。

 番組中の議論は冷静で、「育休の穴埋めの負担は職場で考えるべき」「批判的な意見に配慮して、文字のないただのお菓子でよいのではないか」などは概ね同意。

 「批判する人の心に余裕がない」という意見もありますが、事態はそれほど単純でないのでしょう。やはり、平石アナが指摘したように「人口に対して子育てしている人たちの比率が低すぎる」というのが課題の一つであります。昭和の時代までは成人の多くが結婚し、子育てしていましたが、現代はそうではない。そのため、「お互い様」という感覚が失われつつありあます。

 一方で、こちらも平石アナが述べていたように「子育てしていることが楽しい」ということが言えない社会も課題であるのです。少子化を防ぐためには、子育てが負担だけでなく、楽しさ、喜び、幸せがあるものだと伝えていかなければならないのです。

 7人の子どもがいる立場からそうした発信をしていかならない責任を感じていますが、やっぱり怯んでしまう自分がいます。一つだけ、皆さんに言っていることがあります。7人の子育ては1人の子育ての7倍ではない、ということです。この辺の詳しい家庭事情は別の機会に触れていきます。

 さて、最後に平石アナの一つの発言が気になりました。「子育てが幸せだとSNS発信してはいけないのか」という意見に対して、「SNSで子育ての幸せ自慢をするのは少子化を防ぐために意味もあるけど、子育て人口が減少している現状では批判を覚悟して行うべき」のような発言がありました。確かに現代社会にこうした状況があることは事実ですが、いかにもテレビ的な発想だなと感じました。番組では、ひろゆき氏がこうした産休クッキ-に代表される社会問題に対して、大多数は同意しているのに批判的な少数派の意見で全体の言動が制限されるのは窮屈な社会だと指摘しています。

 地上波テレビではこうした配慮に振り回されすぎて幅広い意見を取り込むことができなくなっているのでしょう。補足しておくと、個人的にこのABEMA Primeは地上波TVに比べて攻めている感じがあり、時折視聴しています(それでも偏りを感じるときもありますが…)。

 最近、地上波テレビ、百貨店のような昭和感のある文化が、万人受けを目指し過ぎて急速に求心力を失っています(いわゆるオワコン化)。これと同様に、現代の「学校」も少数意見に振り回されすぎて何を目的に教育して行くのか方向性を見失い迷走しつつあるように感じます。この多様性の時代の学校教育のあり方も考えていかなければなりません。