七つの子の教育学

大学教員による七人の子育てと教育問題についての雑感

少子化問題(3) 子育てにかかる費用の総額を示すことは百害あって一利なし

皆さんは、ニュースや新聞等の報道で「子育てにかかる費用の総額」を耳にしたことがあるでしょうか。小学校から大学まですべて公立なら700万円程度、すべて私立なら2000万円程度の教育費(学費だけでなく食費、衣料費、レジャー費などを含む)がかかるというものです。

少子化対策を考える時、これから結婚や出産を控える若者にこの情報がどれほどの悪影響があるか考えているのでしょうか。こうした情報は、以下の文脈で使われてます。

(1)これだけ教育費がかかるのに少子化対策を怠っているとして政府を批判する。

(2)これだけ教育費がかかるので金融商品(保険、投資など)を売り込もうとする。

 

しかも、これらの試算では、少子化対策内閣府が2010年3月に発表した「インターネットによる子育て費用に関する調査」の報告書という10年以上前の古い資料が今でも存在感を発揮しています。

こうした、子育てにかかる費用を示すことは不安をあおり、多く若者が結婚、出産をためらうことでしょう。

しかし、実際に子育てをするときに向こう20年の総額まで考えて子育てをすることはほとんどないはずです。子どもを授かることから神秘的な出来事です。子育てが機械のプログラムのように進んでいくのではないのですから。親たちは子どもが成長して感じる喜びを与えられ、少し先の子どもの未来に期待を寄せて子育てをしているのです。

7人を育てている親として言っておきたいことは大学だけが異常に出費が大きいということです(大学だけ私立の場合です)。

もちろん小さい頃の子育てにもお金がかかります。しかし、高校生まで公立であればよほど習い事に費用をかけない場合はそれほど出費は大きくないのてす。とにかく幼稚園から大学生までの子どもを抱える親として今年強く感じたことは、大学生の費用が大きすぎるということです(大学の教員なのにこの現実に初めて直面しました、学費を払ってくださる学生の皆さんありがとうございます)。入学金等含めて150万くらいはかかります。

高校生までも塾に行けばそれなりに費用はかかります。しかし、大学が私立であるとこれまでに出費が本当に微々たるものに感じるほど高額になります。

我が家は3年後、順調にいけば一郎、二美、三郎が3人同時に大学に在籍することになります。まさに家計は火の車。これが、妻が今年度からフルタイムで働き始めた理由です。

最後に、こうした我が家の事情から岸田首相の大学無償化制度はまさに渡りに船。実現してくれたらとてもありがたいです。

ただ少子化対策として、これでもう一人産もうと考える家族が増えるかは別の問題です…、