七つの子の教育学

大学教員による七人の子育てと教育問題についての雑感

少子化問題の解決のためには若者に結婚のメリットを語ろう!

 先日、合計特殊出生率が過去最低であることが報道されました。

2023年の出生率1.20、過去最低を更新 東京都は0.99 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

記事では以下の様に報道されています。

 

厚生労働省は5日、2023年の人口動態統計を発表した。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.20で過去最低を更新した。出生数や婚姻数も戦後最少だった。経済負担や働き方改革の遅れから結婚や出産をためらう若い世代が増えた。少子化と人口減少が加速してきた。」

 

 ここでは、経済負担や働き方の遅れなどが少子化の原因だと分析されています。しかし、こうした時の政府を批判することを目的としている感情的な分析がますます問題を悪化させているようなきがしてなりません。

 少子化問題については、赤川学『これが答えだ!少子化問題』(筑摩書房、2017)という非常に優れた本があります。著者の優れた分析を紹介しますと以下の様な内容があります。

①「女性本人や世帯全体の年収が高ければ高いほど、子ども数は少なくなる」(pp.47- 48)

②「少子化の要因の殆どは、結婚した夫婦が子どもを産まなくなっているのではなく、  結婚しない人の割合が増加したことにある」(pp.62-63)

③「経済成長こそが少子化を推進してきた」(p.103)

④「豊かな国であればあるほど出生率は低い」(p.104)

⑤「社会の最上級では、福利がつねに生活水準を上回るので、出生制限はおきない(=金持ちの子沢山)。逆に社会の下級にあっては、そもそも生活水準が低いので、出生制限は起きない(=貧乏の子沢山)。これに対して上級と中級では、福利の増進以上に生活標準が高まるので、出生制限が行われ、子どもの数が減る」(p.156)

 

 報道では、常に政府の批判ばかり先行します。しかし、本来はこうした分析結果を前提に議論すべきなのです(赤川氏は「都合の悪いデータはお蔵入り」と揶揄しています)。

  常々思っていることとして、②の結婚の問題が深刻です。子育てにお金がかかるということは確かにそうですが、結婚にお金がかかるというメッセージは明らかにミスリードです。一人暮らしであったならば、家賃、水道光熱費、食費など費用面では二人で暮らした方が明らかに効率がよいです。実家暮らしからの場合、家賃の他に家具、家電など初期投資はかかりますが、二人が働いていればそれほど難しくはないはずです。

 とくに、信頼できる相手と結婚できた場合、自分が万が一職を失い、収入が途絶えたとしても配偶者がその場をしのいでくれるかもしれません。こうしたリスクを支え合うことも結婚のメリットであると言えます。

 我々の世代がもっと結婚することのメリットを若者に伝えていく必要があるように思います。ただ、ここの課題は結婚が必ずしもいいことばかりではないということなのかもしれませんが、それでも現状は結婚のメリットを強調するメッセージが少なすぎるように思うのです。

 子どもを産む、産まないはその後の選択ですから。