七つの子の教育学

大学教員による七人の子育てと教育問題についての雑感

ICTに負けてたまるか!教師の主体的な学びを実現することの重要性

国語教育の優れた実践家として知られる野口芳宏氏ほかによる『ICTに負けてたまるか!人間教師としてのプライド』(学芸みらい社、2024)を読了しました。

紹介しておきたい要点が二点あります。

一つめは、「芸道修業は教育の原型」(p.66)です。

芸道の教育を例に挙げて以下の様に述べています。

「弟子の向上の条件は、師の教えを敬い、指導を素直に受容し、教えに従って改め、正し、それを繰り返して習熟することである」、「師匠は、高い立場から、弟子をより高みに導くべく、指摘し、指導し、時には手本を見せて違いに気づかせる」(p.67)

こうした教育の原型に対して野口氏は、学校現場における「教える」ことへのためらいがあることを危惧しています。さらに、学校現場では「教える」ということが、何となく悪いことのように思われているようだと指摘しています。

私も現代の「主体的・対話的で深い学び」が「主体的」「対話的」な「浅い学び」になっているような現場をよく目撃します。そのような浅い学びになるのだったら教師が教える方がよいということだってあり得るのだと考えます。

 

二つめは「本を読むという研修法の不易」(p.84)です。

今、学校現場では「学び続ける教員」が求められています。しかしながら、自ら学ぶ教員というよりは行政機関による研修によって「学ばされる教員」になっている現状があります。

本来は、「憧れる師を持つ」「本を読む」ことが重要であると野口氏は指摘しています。著者の言葉を借りれば「優れた聖賢の著書は時空を超えて色褪せることなく人々を高く、深く、豊かに導いてくれる」、「質の高い本ほど安価なものはなく、質の高い書物ほど読み手を高みに導く存在はない」のです(pp.85-86)。

素晴らしい言葉です。

こうして教師が自ら読書等で主体的に学ぶことを実践していれば、必ず児童生徒を「深い学び」へ導くことができると私は信じています。

教職を目指している学生や現職の先生方にも是非読んでほしい一冊です。